日本には文化財も数多くありますが、すでに生命を失ったものが少なくありません。向瀧の磨きの文化は貴重な文化財に生命を与えています。向瀧の玄関を潜った瞬間に伝統が醸し出す文化の息吹を感じました。向瀧は有形文化財だけでなく無形文化財でもあることに気づかされました。 温泉はよく言えばレトロですし、悪くいえば古くさいのですが真価は風呂上がりに現れてきました。体が火照り、脈拍は下がるのですが拍動は力強くなりました。副交感神経の働きが強められているのがホルモン剤を使用している私には分かりました。湯治の力を実感しました。次の日に寝過ごしたぐらいリラックスできました。湯治の意味が初めて分かりました。 夕食は地元の食材を吟味し、その良さが見事に生かされていました。圧巻は鯉の甘煮です。アウトラインは予想したとおりでしたが、微妙に違う味わいは匠の技です。二日目は棒鱈でしたが、金沢の正月料理の定番です。おばちゃんの味でしたが一味違いました。朝夕二食を完食しました。温泉旅館のメニューには大差がないのかもしれませんが、本物とまがい物の区別ぐらいは私にもできます。 最上部の菊の間でしたから食事を運んでくださった仲居さんの運動量は膨大でした。私たちのために毎回五回ぐらいは往復してくださいました。単に建物を磨くだけではなく温泉、食事などへの配慮も磨きの文化なのでしょう。ハード面だけではなくソフトがしっかりしている印象を受けました。 忘れてはならないのは老舗旅館にも拘わらず情報発信力が桁違いに多いことです。私が向瀧を知ったのもインターネットです。福島県の温泉郷で夏休みを過ごすことに決めたのは大震災直後です。女将さんのブログを見始めたのは3月24日の宅配便開通からです。差別しないでくださいを読んでから白髪頭の追っかけに変身しました。毎日ブログを観てからツイートするのが日課になりました。六代目の写真やビデオ、特にオオムラサキや流失した鉄橋を通るSLが印象的でした。半年間女将さんのブログを見続けてきましたからいつの間にか常連客気分になっていましたが、向瀧は期待していた以上に素晴らしい温泉旅館でした。老舗は名前ばかりになっている現代日本の中で数少ない本物の老舗旅館だと感じました。 女将さんの追っかけは続けますが、六代目は赦してくれますよね。女将さんは本当に綺麗で女優さんみたいですから、白髪頭に追っかけられても美人に生まれたのが因果だと思い諦めてください。
堀俊明さまへ こんにちは、向瀧の平田裕一です。この度はご宿泊いただき、また、お書き込みありがとうございます。 堀さまにお申し込みを頂いてから、約半年がたちました。そして、これだけ内容の濃いご旅行になったこと、大変嬉しく思います。 私たちが、いつも気をつけていること、伝えたいことなど、すべて、感じていただけました。 会津藩からの宿の息吹、会津の大地が生み出す美味しさ、地球の恵である温泉、そして向瀧すべてを地震からも守ってくれた自然環境などを、生き続ける状態を保つ事が、私たちのやらなければならないことです。その行動の基盤として「磨きの文化」があります。 建物を磨き、技を磨き、己を磨くという「磨きの文化」が実践できたときに、お客様の思い出を磨き続けることが、出来るのです。 この度の堀さまの思い出が、いつの時代になっても、ピカピカの状態、それ以上に輝くように磨いて、またのご来館をお待ちいたしております。
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